7e0062e5fb03032d08b8301b74d4fa05_s
2019年は、米中摩擦、株価の乱高下などで波乱の幕開けとなりました。
5月には元号が変わり、新たな時代が始まります。こうした中、不動産・住宅業界も「変化の時代」を迎え、大きく変わろうとしています。グローバル化、少子高齢化、人手不足に対応した「働き方改革」が進行する中、AIやIoTが普及し、シェアオフィス、シェアハウス等のシェアリング経済が深く浸透しつつあります。こうしたビジネス環境の激変を踏まえ、不動産・住宅業界の各社トップは年頭訓示で何を強調したのでしょうか。今回は業界各社トップの年頭訓示の中から、目立った訓示を拾い上げ、今年の展望を探ってみました。

海外でも新エリア・新領域での事業展開を進め、成長を加速させる

まず、業界イノベーションに真っ先に取り組んできている三井不動産の菰田正信社長。「当社の経営方針では、①街づくりを通して持続可能な社会の構築を実現すること、②テクノロジーを活用し不動産業そのものをイノベーションすること、③グルーバルカンパニーに進化すること――を新たなビジョンに掲げました。今年は、新天皇が即位されて元号が変わり、新たな時代の幕開けの年となります。当社グループでは、人々に暮らしやビジネスライフというサービスを提供していく「リアルエステート・アズ・ア・サービス」に取り組むとともに、海外においても新エリア・新領域での事業展開を進めることで、成長をさらに加速させていきます」と訴えています。

時代の変化を先取りし、新たな事業を創造してビジネスモデルの革新を

三菱地所の吉田淳一社長の年頭訓示は、「2019年度は中期経営計画の最終年度に当たる。総仕上げとして、堅調なマーケット環境下で、収益基盤強化の成果を、利益として具現化することに加え、環境変化の加速をチャンスととらえ、時代の変化を先取りして、新たな事業を創造するなど、1920年代のさらなる成長にむけたビジネスモデル革新を推進する。」

一寸先は闇で、予断を許さない。視野を広げて変化を見極めよう

住友不動産の仁島浩順社長は、次のように檄を飛ばしております。
「昨今の海外情勢のように一寸先は闇で、事業環境の急速な変化も起こり得るため、予断を許さない。持続的な成長を確実なものとするため、これまで以上に視野を広げて変化を見極め、柔軟な発想で、それぞれの課題に取り組んでほしい。今年も全社一丸になって頑張ろう。」

ロケット成長を目指し、ESG経営のリーディングカンパニーを目指す

積水ハウスの仲井嘉浩社長は、「当社グループは、次の3つのチャレンジによるロケット成長を目指します。これは、単に事業拡大を目指す成長ではなく、社会的意義を伴う成長です。1つ目は、コア事業である戸建て住宅事業における新ビジネスモデルの立ち上げです。これまでは請負が中心でしたが、これからはお引渡し後のサービス提供にもビジネスモデルを拡張します。「わが家」を世界一幸せな場所にすることです。2つ目は、国際事業の強化です。3つ目は、ESG(環境・社会・ガバナンス)の強化で、「環境」「社会性」を、企業の「ガバナンス」に組み込む経営です。当社グループは、日本のESG経営のリーディングカンパニーを目指します。」

消費増税に対する備えと、増税後のお客様へのきめ細やかな提案と対応を

大和ハウス工業の芳井敬一社長は、「先行き不安から個人消費が伸び悩み、足踏み状態が続く時こそ、基本に立ちかえり、足元の事業を固めるとともに、「2055年に売上高10兆円」の目標達成に向けて積極精神で事業に当たらなければならない。挑戦しなければならない課題は3つ。1つ目は、消費増税に対する備えと、増税後のお客様へのきめ細やかな提案と対応。2つ目は、海外事業のさらなる飛躍。3つ目は、こうした成長に欠かせない個々のパワーアップ。時代が変わる本年だからこそ、王道を歩み、勇猛果敢に挑戦し続ける年にする。」

ハコやモノの枠を超えて、ライフスタイルを創造・提案する時

東急不動産ホールディングスの大隈郁仁社長。
「今夏の東京・渋谷の(仮称)「南平台プロジェクト」への当社グループの拠点の移転を機に、名実ともに「ハコやモノの枠を超えて、ライフスタイルを創造・提案する企業グループを目指すステージ」を加速・強化する時だと考えている。
マーケットのニーズに向き合い、価値ある商品・サービスを生み出すことで、成長をできる。」

今年は、「つなぎ、ひらく年」。地下鉄新駅名も「虎ノ門ヒルズ」に決まった。

森ビルの辻慎吾社長は、全社員に5つの注文をしました。
「19年は、「つなぎ、ひらく」年だ。「虎ノ門ヒルズエリア」では、「国際新都心・グローバルビジネスセンター」が、現実の街として、その姿を現しつつある。加えて、地下鉄・日比谷線新駅の駅名も「虎ノ門ヒルズ」に決まった。社員一人ひとりには、①「個性的であること」②「既成概念に縛られず、新しいことに挑戦すること」③「志を持つこと」④「トップランナーを目指すこと」⑤「個の力を高めること」――の5つを常に意識してもらいたい。森ビルが森ビルらしくあるために、私がとても大切にしていることです。」

固定概念にとらわれず、新しいワクワクするような未来の創造を

森トラストの伊達美和子社長は、「オリンピックを目前に控える2019年は、今後激変する社会環境を見据え、足場固めの年であるととらえています。持続可能性、オープンイノベーション、スマートテクノロジー、ウエルネスといった将来性を加味しながら、固定概念にとらわれず、多様な機会を創造していくことで、経済発展と社会的課題の解決を両立する「Society5.0」に実現に貢献してまいります。2030年より先の未来を見据え、時代の変化に適応した柔軟な発想とアプローチで、「新しいワクワクするような未来の創造」を目指してまいります。」