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2018年、不動産・住宅業界の環境が大きく変わろうとしています。グローバル化、少子高齢化、人手不足等に対応した「働き方改革」が進行する中、AI(人工知能)やIoT(あらゆるモノがネットでつながる)が普及し、シェアオフィス、シェアハウス等のシェアリング利用が深く浸透しつつあります。これによって、床を貸したり売ったりする従来型のビジネスモデルが大きく崩れつつあります。こうしたビジネス環境の激変を踏まえ、不動産・住宅業界の各社トップの年頭訓示も、「イノベーション(改革)」の重要性を訴えたのが注目されます。その代表例として、業界トップの三井不動産の菰田正信社長は、「今年は不動産業そのものをイノベーションします」と、過激に訴えています。

シェアリング・エコノミーが業界を変えてしまう

今年はまさに、シェアリング・エコノミーが各産業界ばかりか不動産・住宅業界を大きく変えようとしています。そこで今回は、業界各社トップの年頭所感の中で目立った訓示だけを拾い上げ、将来展望を探ってみました。

新ビジネスを開拓し、新しい未来を切り拓いて行こう!

まず、三井不動産の菰田正信社長はこう訴えています。「昨年は、多様化する働き方に対応した法人向け多拠点型シェアオフィス「ワークスタイリング」事業や、リアル施設とも連携するECサイト「&モール」の開設など、新しいサービスを開始しました。今年は新しい未来切り拓いていく年にしたい。ICTの活用を徹底的に進めながら、既存事業を進化させるとともに、新しいビジネスを開拓し、不動産業そのものをイノベーションしていきます」 

新本社でイノベーティブな職場環境をつくり、変化の先取りを

次に、三菱地所の吉田淳一社長の訓示を紹介します。
「新年より新本社へ移転し、社内コミュニケーションを活性化させ、一層イノベーティブな職場環境づくりを目指していきます。当社自らが先端オフィスのあり方を考え・発信していくことで、他社にはない当社ならではの強みを発揮するだけでなく、社会のニーズや環境変化を先取りし、競争力を一層高めていきたい」

変化を見極め、既成概念にとらわれずに、柔軟かつ多面的な発想を

住友不動産の仁島浩順社長は次のように檄を飛ばしています。
「事業環境は刻々と変化しており、この好況が続くとは限らない。全役職員各々が、事業環境の変化を見極め、既成概念にとらわれることなく、柔軟かつ多面的な発想で仕事に取り組んでほしい。今年も全社一丸となって頑張ろう」

ベンチャー企業やスタートアップ企業を多数集結し、オープン・イノベを

東急不動産ホールディングスの大隈郁仁社長は、「渋谷にはベンチャー企業やスタートアップ企業が多数集結しており、「価値を創造し続ける企業グループ」の実現のためには、いはゆるオープン・イノベーションが不可欠だ。また、再生エネルギー事業や物流、インバウンド対応のホテル事業などの投資機会が拡大しており、積極的にこれらに取り組んでいきたい」と、意気込みました。

新たな海外展開、コンセッション事業等への積極的なチャレンジを

東京建物の野村均社長。
「さらなる創意工夫とともに、新たな海外展開、コンセッション事業等への積極的なチャレンジが必要です。社員一人ひとりが業務の生産性・効率性を高め、自身の視野や見識を広げる時間をつくり、人として一層成長していくことが求められている」

社会の変化や将来を見据えた変化対応型の企業として、前進を

野村不動産ホールディングスの沓掛英二社長。
「経済やライフスタイルへのインパクトに、しっかり目を向けた準備と対応、そしてビジネスへの落とし込みをしていく必要がある。社会の変化や将来を見据えた変化対応型の企業であることの意識を、さらに強く持ち、目標達成に向けて着実に前進したい」

変革の年、臆することなく困難に挑戦し、次世代リーダーへと成長を

森ビルの辻慎吾社長は、「今年は変革の年だ。次のステージに飛躍するためには、今までと同じ考え方や、仕事のやり方をしていてはいけない。変化と競争の激しい時代に、変革することなく、同じポジションにとどまり続けることは不可能だ。大胆かつ柔軟に変革し、次のステージを目指していく。臆することなく、困難なことに挑戦し、チャンスを活かして次世代リーダーへと成長してほしい」と、次世代リーダーへの期待を訴えました。

「自律・分散・協調」型の組織基盤を整え、柔軟な発想で未来を創造

森トラストの伊達美和子社長は、「今年は、2020年以降までを見据えた「自律・分散・協調」型の組織基盤を整える年。クリエイティブ、かつ生産性の高い人財育成を目指し、プロアクティブな組織の構築を目指す。社会の潜在ニーズをとらえ、時代の変化に適応しながら、柔軟な発想とアプローチで新しい未来の創造を目指していきます」と、意気込みました。

各事業分野でのシェアを「行動第1主義」で、ナンバー1にしてほしい

大和ハウス工業の芳井敬一社長は訓示の中にいくつかの注文をおりこみました。「全役職員に4つのお願いをしたい。①トータルの売上高は業界1位だが、ナンバー1の事業はない。各事業でのシェア、ナンバー1の奪取を。②そのための「行動第1主義」の徹底。頭でっかちで足腰の弱い人間にならないよう「熱意と足」での仕事を。③海外事業の拡大。その目標達成には人財が不足している。皆さんは、いつでもすぐに海外で活躍できるよう「精神力」「経営感覚」を養い、「日常英会話の能力」「世界中で活躍できる姿勢・意欲」を培ってください。④人財育成を目指しましょう」

事業環境の変化に盤石の備えをし、「わくわくドキドキ心躍る」職場に

積水ハウスの阿部俊則社長は、「今年は住宅産業を取り巻く事業環境は大きく変化する。そうした変化への備えを盤石のものにしていく。当社の強みの「技術力」「顧客基盤」「施工力」の中身を改めて見直し、労働時間や労働生産性という表面的な数字だけに目を奪われずに、「わくわくドキドキ心躍る職場づくり」をテーマに掲げて、働き方改革を推進していきます」と、呼びかけました。

想定以上の変化のスピードに対応し、アイデアが次々生まれる企業に

大京の山口陽社長は、「テクノロジーの進展は、新たなビジネスを生み出す一方、既存ビジネスを急速に衰退させる。スピード感をもって、新たなテクノロジーを取り入れていく。世の中は、想定以上のスピードで変化しているので、変わっていかなければならない。顧客ニーズやウォンツを具現化するアイデアが、次々と生まれる企業カルチャーを築いていこう」と、訴えました。

以上のように、今年はイノベーションを合言葉に、変化の激しい疾風怒涛の時代の変わり目に遭遇し、「変革を!」「イノベーションを!」と訴えるトップがいつになく多かった模様です。スピード感をもって大胆に挑戦していこう、と全役職員に熱く呼びかけていた訓示が目立ちました。