オリンピック大会後の選手村跡地のニュータウン「HARUMI FLAG

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2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会の開催が近づいてきました。そこで気になるのが、五輪レガシー(遺産)の目玉の1つとなる東京・晴海の「選手村」です。晴海は戦前の埋立て事業によって生まれ、長らく国際見本市会場となっていたエリアです。大会終了後、その晴海に作られる選手村が、近未来環境都市のモデルとなる新しい街「HARUMI FLAG(ハルミ・フラッグ)」として生まれ変わります。そこで今回は、ポスト選手村のニュータウンづくりを追ってみました。

ニュータウン「HARUMI FLAG」として、新築マンション5632戸を供給、人口1万2000人の街に

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五輪選手村は東京都の再開発事業です。
都が道路や保育施設などの公共施設を、民間デベロッパー11社が住宅および商業施設の開発を担当します。住宅部分は三井不動産レジデンシャルを幹事とする三菱地所レジデンス、住友不動産、住友商事、野村不動産、東急不動産、東京建物、NTT都市開発、新日鉄興和不動産、大和ハウス工業の10社で請け負い、商業施設部分は三井不動産が事業者となっています。

オリンピック大会中、この五輪選手村においては建築基準法の「仮使用」制度を活用することになっています。大会終了後には内部を改装して、新築マンション「HARUMI FLAG」として一般向けに分譲・賃貸される予定です。開発面積13㌶という広大な敷地に、5632戸(分譲4145戸、賃貸1487戸)のマンション23棟と、商業施設1棟の合計24棟が建てられ、2024年度には人口1万2000人が住む新しい街ができあがります。このため、来年5月までにマンションのモデルルームを公開して、販売を開始しなければならないのです。

駐車場はすべて地下にして大空間を創出し、どこからでも海が見渡せる街に

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民間デべロッパー11社の開発プランによると、「HARUMI FLAG」は近未来型の環境先進都市づくりを目指しているそうです。そのプランのビジョンは、多彩なオープンスペースを創出する設計思想に基づいています。具体的に言うと、駐車場をすべて地下に持っていくことで、大きな中庭空間を生み出すというものです。
また、敷地の周りの三方に広がっている海を住民すべてが謳歌できるように、街のどこからでも海の風景を見渡せる作りになる予定です。これには、25人もの一流デザイナーが指針とした「個性と統一感のある環境デザイン・ガイドライン」を具現化した結果と言えるでしょう。

住宅は1009通りの間取りを用意!シェアハウスやシニア住宅、介護住宅も

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分譲住宅においては、独身・夫婦・子育て世代・シニア世代など、多種多様なライフステージやライフスタイルに対応できる1009通りの多彩な間取りが用意されています。賃貸住宅においても1K・1LDKのコンパクトな間取りはもちろんのこと、広々とした3LDKも見受けられそのバリエーションは多岐に及びます。

さらに、若年層のライフスタイルを意識した「シェアハウス」は、単身用の個室型から4~5人で暮らせるユニット型のものまで多彩なプランが用意され、共同利用できる大きなリビングラウンジやキッチンスペースなど、開放的なコミュニティを育てるための共用部も設けられています。また、「シニア住宅」には24時間常駐のスタッフと見守り設備を完備。安心・安全な暮らしを提供しているほか、「介護住宅」まで用意されているという手厚さです。

街区をまたいだエリアネットワークで、3つのサービスインフラを提供

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それでは、街区や周辺のインフラはどのようなプランになっているのでしょうか。
「HARUMI FLAG」においては、巨大な街の通信サービス基盤となるエリアネットワークが、街区をまたいで形成される予定です。データセンターと各街区が、専用の光ケーブル網を通じてひとつながりに接続し、次の3つのサービスインフラを提供するのです。

① タウンポータル(町のイベントや、災害時のお知らせなど、街のあらゆる情報が掲載されたポータルサイト)
② エネルギーマネジメント(地域のエネルギー状況をAEMSで取りまとめ配信し、居住者の取り組みと成果を共有する)
③ セキュリティー(個別の街区だけでなく、街区全体を監視する約750台のカメラの通信データをセキュリティーセンターにおいて一元管理する)

このほか、デジタルサイネージを使った情報発信や、共用部や敷地内各所における居住者向けのフリーWi-Fiも展開予定で、災害時にも率先して情報発信がされる予定です。

カーシェアリング、シェアサイクルで、日常の移動手段をみんなでシェア!

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さらに、日常の移動手段を住民でシェアすることもできます。
そのうちの1つは、各街区に複数台用意されたカーシェアリングサービスで、完全無人運用で利用することができるEV(電気自動車)や水素カーです。2つ目はシェアサイクルで、24時間利用できる居住者専用のレンタルサイクルシステムを導入することによって、各棟の駐輪場に数種類の電動自転車を用意します。3つ目はコミュニティサイクルへの対応。選手村のある中央区では現在、区境を越えたアシスト付き自転車のコミュニティサイクルの実証実験(ドコモバイクシェア)を行っており、居住者の身近な足として、通勤・通学・買い物等で活用できるコミュニティサイクル用のポートをすべての建物の前に約300台分を設置する予定です。

「水素ステーション」を設置して、CO2を排出しない水素社会の実現を

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近未来型の環境先進都市実現の極め付けは、CO2を排出しない水素社会の実現を目指していることです。これは東京都がエネルギー事業の取り組みとして挑んでいるもので、敷地の一角に「水素ステーション」を設置して、水素パイプライン、準水素型燃料電池を整備し、燃料電池バスなどの車両への水素供給やパイプラインを通じた街区への水素供給を実現します。

今年の2月に、東京ガスを代表企業とするエネルギー関連6社(東京ガス・JXTGエネルギー・東芝・東芝エネルギーシステムズ・パナソニック・晴海エコエネルギー)が東京都によって選定され、事業が推進されることとなりました。「HARUMI FLAG」では、都市ガスから取り出した水素を利用し、電気とお湯を作り出す家庭用燃料電池「エネファーム」を全住戸に採用する予定です。このエネファームと蓄電池の両方を全住戸に設置したのは、日本では初めてのことです。

「HARUMI FLAG」の鉄道の最寄り駅は都営地下鉄・大江戸線の勝どき駅で、駅から徒歩20分はかかるため立地がいいとは言えません。このため、東京都は新たな大動脈「環状2号線」を開通させ、その上にBRT(バス高速輸送システム)の新交通システムを走らせて都心と湾岸エリアをつなぐ予定です。

以上のような全体計画をもって作られてゆく「HARUMI FLAG」は、近未来の最先端都市生活のフラッグシップになるような街づくりを目指しています。