昨今、高齢者人口や高齢者のみの世帯数が急速に増加しています。
30年後の2050年頃には、男性の平均寿命が84歳、女性が90歳まで伸長する「人生100年時代」の到来が見込まれるほど、60歳以上のシニア世代層に新たなライフステージが生まれつつあります。この新たなライフステージの暮らしにマッチした元気な高齢者に対して、より自分らしい豊かな暮らしを実現していくための新しい住宅の提供が続々とお目見えしています。今回は、こうした元気な高齢者向けの住まいのサービス動向を追ってみました。
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まず、わが国の高齢者の現状からみてみましょう。
先に発表された内閣府の『高齢社会白書』(2018年版)によると、わが国の総人口1億2671万人のうち、65歳以上の人口は3515万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も27.7%となりました。また、国立社会保障・人口問題研究所が2017年に公表した「日本の将来推計人口」によると、35年後の2053年には総人口は1億人を割って9924万人となり、高齢化率も現在比10ポイントもアップし37.7%となり、すっかり老人社会が主流となってしまう姿が現出しそうです。

シニア世代の住宅は、バリエーション豊かな多様化時代に

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同時に長寿化も進行するので、その頃は平均寿命もさらに伸長し90歳前後となるものと予測され、100歳以上がそこここに元気に歩いている社会となるでしょう。まさに「人生100年時代」が現実味を帯びてきそうです。今後は元気なお年寄りが一層増え、とくに団塊の世代と言われる現在の70歳前後の大量高齢者層が、あと10年後も20年後も健康年齢を保持できる時代となってくるでしょう。

このように、シニア世代の新たな人生ステージが大きく変わろうとしています。それに合わせた住まいのステージも、豊富なバリエーションが必要な”多様化時代“を迎えようとしています。

住宅金融支援機構の高齢者向け住宅ローンが急増、新築ニーズに集中

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そうした状況を先取りするような動きが早くもみられています。
住宅金融支援機構の『リバースモーゲージ型住宅ローン』(今年の5月から愛称を「リ・バース60」とした)の利用実績がここへきて急激に増えているのです。これは満60歳以上の高齢者にも住宅ローンが借りられるようにした新しい制度で、2017年度の申請戸数が前年度(39戸)比4.5倍増の174戸もあり、うち成約戸数は68戸で前年度(16戸)比4・2倍増の実績といいます。この勢いは2018年度になってさらに勢いを増しており、4-6月の第1四半期だけで申請戸数98戸の実績を上げ、成約戸数も22戸という前年度同期比8倍の伸びを見せています。

利用者の資金用途は、①子世帯と近居するための新築マンションへの住み替え購入、②利便性の高い新築マンションへの住み替え購入──が大部分で、これにわずかな新築戸建ての購入者を含めると70%を占めています。残り30%の用途は、老朽化した自宅のリフォームや建て替え資金、毎月の住宅ローンの支払額を減らすための借り換え等々となります。

元気な高齢者がもう一度借り入れをして新築住宅を買い替えること自体が驚きであり、しかも、このような旺盛な需要があるのだからさらに驚きです。ちなみにこのローンの支払いは毎月利息のみで、元金は死亡時にその住宅と引き換えに支払うことになっています。ただし、いまのところその利用実績はないとのこと。

不動産大手各社も続々と、シニア住宅に本格参入

                  
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一般的に高齢者の住み替え先というと、特養老人ホーム施設は別として、有料老人ホームやグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅(いはゆる「サ高住」)などが主流となっていますが、住宅金融支援機構の高齢者向け住宅ローンの利用者のような元気な高齢者が新築のマンションに買い替える具体例が増えてきています。こうした動きは、民間デベロッパーの不動産大手各社がいち早く反応して商品供給を始めています。

三井不動産では今年に入って、元気なシニア層にターゲットを絞った新しい形のレジデンス供給サービス事業を立ち上げました。具体的には、入居時年齢60歳以上の元気なシニアのためのサービスレジデンスの専用ブランド「パークウエルステイト」を新たに開発し、高品質な高級住宅の商品・サービスを大都市圏で取り組みだしました。

基本的な事業スキームは、三井不動産レジデンシャルが新設した子会社の三井不動産レジデンシャルウエルネスに建物を賃貸し、同社が入居者と終身建物賃貸借契約、または終身利用権方式による契約を締結するもので、運営主体となって生活相談など入居者へのおもてなし・ホスピタリティサービスを提供していきます。その第1号のマンション施設が東京都杉並区の高井戸東に「パークウエルステイト浜田山」(地下1階・地上3階建て。一般居室62戸、介護居室8戸の合計70戸)です。2019年6月開業予定で、介護・看護パートナーに東京海上日動ベターライフサービス、医療連携相手には順天堂大学病院を予定しています。

東急不動産もシニア住宅「グランクレール」を田園都市線沿線中心に展開しています。これは自立した高齢者が自分らしく過ごせる住まいづくりを目指したものです。また、野村不動産も同様のシニア住宅「オウカス」を第一号施設として船橋市に開業し、首都圏中心に今後も注力していくとしています。これから先は、こうした不動産大手が今までのマンション開発で培った快適な空間設計と住民サービスの豊富なノウハウを生かして、元気なシニア世代向けの高品質住宅を供給していくことになるでしょう。