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誰が所有しているのか分からずに放置されたままの土地が、大きな社会問題になっています。民間有識者らでつくる「所有者不明土地問題研究会」(座長=増田寛也元総務相)の調査では、これら所有者不明の土地は国内に410万㌶(2016年時点)もあり、その総面積は九州本土よりも広いとされています。このままでは、2040年には北海道の広さに迫る720万㌶に拡大し、これによる経済的損失は累計で6兆円にも上ると推計されます。政府も所有者不明土地の利・活用を促進させようと特別措置法などをつくり、ようやく対策に乗り出しました。

相続未登記が多く、土地の利・活用に大きな支障が

記事用
所有者不明の土地とは、相続登記が何代にも渡って行われていなかったり、所有者が判明しなかったり、または判明したとしても所有者本人と連絡がつかない土地のことを指します。その背景には明治時代以来、登記が義務付けられていなかったために、長きにわたって真実の権利関係が反映されていないという事情があります。
処分や管理が困難になった土地は活用されないまま、公共事業や農地の集約化、再開発事業などの土地活用を停滞させる大きな原因となっております。地域によっては、ゴミの不法投棄などの問題も生じています。

所有者不明土地は、公園や文化施設に利用できる特措法が成立

このため、政府もようやく重い腰を上げて、この6月から所有者不明の土地対策に乗り出しました。その第1弾が、6月に成立した所有者不明土地の利・活用を促進させる特別措置法です。その内容は、①都道府県知事の判断で最長10年間の「利用権」を設定し、公園や仮設道路、文化施設などを公益目的での利用ができるようにする、②さらに公益目的であることを条件に、NPO法人などが直売所や駐車場なども作れるようにする、③道路や街づくりなどで、公共事業の妨げとなっている所有者不明土地については、都道府県の収用委員会の審理を経ずに、その土地を取得できるようにする――という対策を盛り込んでいます。

さらに政府は、第2弾の追加対策として、所有者不明土地の抜本的解消に向けた対策案をまとめました。今年度中に具体的な方向性を提示し、2020年度までに土地基本法の改正など関連法改正を軸にした法整備を目指す方針です。その狙いは、まず土地所有者の把握・実態の確認を進めると同時に、新たな所有者不明土地を発生させないようにすることにあります。

相続登記の義務化や土地所有権の放棄の仕組みも検討

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具体的には、①地籍整備を加速する(国土調査法を改正し、土地の所有者や面積が記してある地籍の整備を急ぐ。衛星写真や民間の測量結果なども活用する)、②調査官の調査権限を強化する(所有者の氏名や住所が正確に登記されていない土地については、登記官に所有者を特定する調査権限を与える)、③相続登記を義務化する(所有者が不明になっているのは、相続した人が土地の登記をしないことが大きな原因。なので現在は任意となっている相続登記を義務付ける。土地基本法には「所有者の責務」を明記する)、④所有者が土地所有権を放棄する制度を検討する(ただし、放棄された土地を誰が管理するのか、管理する費用を誰が負担するのかなどを巡っては調整が必要)――などの仕組みづくりをつくる必要があります。

高齢化に伴い、所有者の分からない土地は今後も増え続けるであろうことが懸念されます。いずれにしても、対策を急ぎ講じないわけにはいかない事態となっているといえましょう。