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このたび、国土交通省の土地鑑定委員会が、地価公示の際に参考となる全国都道府県の「地価の価格形成要因」の概要をまとめました。特徴的なのは、地方中核都市の「札仙広福」(札幌、仙台、広島、福岡)といわれるエリアの地価上昇率が高い伸びを見せていることです。この勢いから、目下高くなりすぎた3大都市(東京、大阪、名古屋)を離れて、この地域に殺到しているマンション業者も増えています。そこで、全国ブロック別にその動向を追ってみました。第1回目は、全国の住宅地上昇率トップ10のうち、7地点を占めた「仙台エリア」からです。

仙台市の「住宅地」の動向は?

まず、仙台市の「住宅地」の動向から見てみましょう。
仙台市の人口は、やや鈍化しているものの増加傾向が続いており、住宅市場は比較的堅調となっています。東日本震災後から続く地価上昇の浸透により、仙台市では売り物件が少ない中、将来の値上がり懸念による需要も発生しており、平成27年12月開通の地下鉄「東西線」沿線では、現在も強い上昇を示しています。

地下鉄「東西線」の開通で、「若林区」は全国1位の上昇率

特に住宅地で全国1位の上昇率を見せた「若林区」白萩町14-18では、「東西線」開業による利便性の向上により、前年比12.3%もアップしました。「東西線」の新駅周辺では、売り物件が少なく、上昇率を強めています。この沿線地域での販売価格は高騰しており、高すぎる売り物件に対する警戒感も出始め、割安感のある郊外の小規模物件への需要が拡散する傾向も現れています。

マンション用地需要は、中心部から外延部へ拡大

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マンション用地は、建築費の高騰で事業採算が成り立つ仙台市中心部で、デベロッパーの激しい用地取得競争が続いていましたが、建築費が落ち着き、用地需要は外延部へ向かってエリアが拡大しています。震災後ずっと続いていた住宅地の物件不足は、次第に解消傾向にあり、古い住宅団地では高齢化に伴い、古家等の供給が増える傾向もみられ、郊外住宅地域の中古物件は増えています。
また、「青葉区」は、平均4.9%増(昨年は3.9%増)で、上昇傾向が鮮明になりました。特に中心部では、マンション用地や収益物件の高値取引が見られ、「宮城野区」は平均2.3%増(昨年は1.4%増)で、上昇幅が拡大しています。中心部近くの利便性の良い住宅地の需要は堅調で、特に仙台駅東口エリアのマンション分譲が活発とみられています。「若林区」は平均6.2%増(昨年5.5%増)で、上昇傾向を強めています。小規模な画地が多く、全般的に住宅需要は堅調。
地下鉄「東西線」沿線での地価上昇は今後も続くようです。

「商業地」の投資需要は、仙台都市圏に限定

次に仙台市の「商業地」の動向を見てみましょう。
仙台市においては、投資ファンドや地元企業による投資物件の需要は旺盛です。一番町にある商業施設のファンド組み入れも見られましたが、こうした商業地の投資需要は、仙台都市圏に限定されています。逆に沿道サービス地域では、土地建物の取引は少ないようです。具体的にみると、仙台市ではSクラスのオフィス需要は旺盛です。東日本大震災の影響により、東北における仙台の中心的拠点機能が見直され、企業支店等の進出が続いたせいでしょう。空室率は震災前に比べて大幅に改善してますが、新規供給は依然として少なく、改善傾向は小幅な動きとなっています。仙台駅前地区での空室率改善傾向は著しいといえるでしょう。

観光客の入込み客数は、仙台圏域に集中して大幅増

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平成27年の宮城県の入込み客数は6,065万人で、前年比より5.6%増加しています。観光客の多かった順に、仙台圏域58.6%、大崎圏域15.1%、仙南圏域9.9%となっており、全体の半数以上が仙台圏に集中しています。また、外国人宿泊者数は、平成27年が19万人(62.7%増、前年は11万人)と大幅な伸びを示しています。仙台市で開催される国際会議等が多いため、外国人の宿泊客数の約68%は、国際会議等のコンベンション関連となっています。ホテル不足が叫ばれる中、仙台市中心部では県外ホテル業者の用地物色の動きがみられます。