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わが国における心肺機能停止症例数(突然の心臓停止を発症する件数)は、年間7万5,000件にのぼるとされています。このうち7万2,000件が死亡しているので、単純計算すると生存者はわずかに3,000件、生存率は4%という低さになります。しかも、そのうち4万3,800件(58%)が、倒れたところの目撃者がおらず、救命処置の開始時間が大幅に遅れてしまった(※)ために救命できなかったという問題が起きています。これらの問題を解決するため、カメラとAIネットワークシステム、救命アプリを駆使しての、ICTを活用した救命率向上の共同実証実験が、わが国初の試みとして行われました。
(※)出典:総務省消防庁「平成29年版 救急・救助の現況」

街づくりの三井不、シスコシステムズ社、Coaido社の3社共同で

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この実証実験は2018年3月、「共助の精神」が古くから根付いている東京・日本橋室町エリアで行われました。街づくりを推進する三井不動産、デジタル変革をICTで支援するシスコシステムズ合同会社、救命のスタートアップ企業・Coaido(コーエイドー)の3社共同で、ICTを活用した安心・安全の街づくりの実現を目指すため、ネットワークシステムの確立と救命率アップに取り組んだものです。

IoTを使い、卒倒者を素早く検知・発信!緊急対応できる体制を構築

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この実証実験のシステムの流れは以下の通りとなっています。

① 目撃者のいない心筋梗塞の卒倒者(急病人)を、カメラとAIを組み合わせた防犯カメラ画像が自動検知・発信
② シスコシステムズ社の情報連携高度化システム「シスコ・スパーク」を通じて、「Wi-Fi位置情報」をもとに、近くのビル防災センターの巡回管理要員にその事態をすぐに通知、現場への急行を指示する
③ ②と同時に、防災センターにあるシスコシステムズ社の「スパーク・ボード」に通知して、巡回管理要員や防災センター要員が現場に駆け付けよう指示を出す。
④ ③これと並行してビルの管理要員が、119番の通報アプリ「Coaido 119」を使い、周囲にいる一般来街者の中で医療資格・救命関連資格を持っている救命ボランティア登録者の救命スキル保持者に支援を要請し、現場に駆け付け救命活動にするよう促す、
⑤ 彼らがAEDを使って卒倒者への緊急対応を行い、現場に到着した救急隊に引き継いで終了。後は、救急隊が患者を担架に乗せて病院に運ぶだけ。

このように、実証実験においては、一連の「救命の連鎖」を起こることが期待されています

日本橋室町エリアでの実証実験を成果とし、他のエリアでも拡大中!

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今後はこの3社に加え、クリューシステムズ社、一般社団法人・日本橋室町エリアマネジメントの5社が設立した「日本橋室町エリア防災高度化実行委員会」が、震災リスクや2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて高まる各種リスクへの関心を背景に、エリアをあげての救急救命と防災機能の高度化を図っていく次第です。この委員会で共同実証実験を積み重ね、関係者との協議・協働を推進し、さらにパートナーを増やしながら、街で働く人、住む人、訪れる人のすべての人にとって、魅力的で安心・安全なまちづくりに向けた体制を構築・確立していくとしています。

また、今回の実証実験は、これまで救命のチャンスが得られなかった目撃者のいない心臓停止状況者の救命に可能性が見いだせたという意味でも画期的な試みでした。この実証実験をモデルケースとし、得た知見を活かしながら他の街での救命率を上げることにも取り組んでいくとのことです。
すでにCoaido社が「Coaido119」を使っての実証実験を東京・池袋エリアで昨年から開始しており、さらに豊島区全域でSOS発信のできるサービスシステムを実証中であるといいます。